Unsere welt

VI

月と星ぼしが光り輝いていた空は、何時の間にか分厚い雲に遮られた。月明かりのなくなった世界は、一層闇に包まれ、全てを食い尽くしていた。世界の傍らに光る花々は自らの存在を確かに示すが如く、僅かに地を蒼く照らしている。 「月光草、という名前でした…

「何故です!?」 若干の怒りが混じった声を張り上げるアトリア。ヴァルトはもたれかかったまま腕を組み、鋭い目を向けた。それこそ、生命を狙う獣のように。 「……ならば聞こうか。何故脱退する必要がある?」 アトリアはその瞳に動じることなく、きっと決意…

ヴァルトはその後に帰国し、元帥に改めて第1軍が壊滅したとの報告を入れた。ヴァルト自身が無傷で帰還したことに僅かな疑問を持たれたようだったが、何よりも彼が生還したことが大きかったようで、元帥はその点は非常に喜んでいた。そして同時に告げられた。…

「ねぇねぇリア大佐」 不意に隣にいた少女に話し掛けられた。 「どうした、ダンタリオン」 「その呼び方だーめ!リオンって呼んでって言ったでしょー?」 ぶー、と言い口を尖らせ明らかに不満げな顔をみせるダンタリオン。こうしているのを見ると、本当に普…

「くっそ……」 迂闊だった。よく考えれば、あんな場所にあんな格好のガキがいる訳がないんだ。馬鹿でかい声で喚きやがって…… 頭がくらくらする。 「ねぇねぇ、追いついちゃうよ~?」 「っ!黙れ!!」 声のした方向へ思いっきり矢を放つ。ドスッと大きな鈍い…

「ヴァルト准将!!」 息を切らして駆け込んできたのは、部下のアトリア大佐だった。肩で大きく息をしながら彼女は私に向かって敬礼をした。 「報告します。東方に展開していた我が軍が謎の生物の一撃により全滅、全兵士に撤退命令を出しましたが、このまま…